【訪問時の状況】 HRNの訪問当時、ECCCはスタッフも100人以上の体制となっていて、段々と、裁判が近づいて来ていることを実感しました。2006年5月には、29人の判検事らが(国際・国内ともに)最高司法評議会(Supreme Council of Majesty)によって正式に任命され、7月3日に宣誓式が行われました。同月10日には、検事らが捜査を開始し、9月11日には捜査判事らが業務を開始しています。内部規則については、7月にワークショップを開催した上で、9月11日、内部規則委員会が最初の会合を持ちました。なお、従前、弁護人について外国人にも道を開くか否かが問題となっていましたが、訪問時点では、可能とすることが決まっていました。
【ECCCでの扱い】 被害者参加には、@証人、A告訴(捜査要請)、B当事者(付帯私訴。被害者が、刑事裁判の中で、民事的な訴えを被告人に対して同じ手続で提起できる制度)の3つの形態が考えられます。ECCCに適用される法律としては、まず、カンボジア法、ECCC法がありますが、ECCC法では、被害者の役割は不明確で、唯一、上訴権を有する、という形で触れられているだけです。被害者参加を直接はっきりと定めた規定が無いのです。ただ、上訴権があることを、カンボジア刑事手続法と合わせて考えるならば、カンボジア法上の付帯私訴の権利が前提になっているとも考えられます。もっとも、被害者の権利の実現にあたっては、@被害者が非常に多いこと、AECCCの予算と時間が限られていること、B国ではなく被告人に対する手続であり金銭補償等は現実的には難しいことなどを考慮する必要があります。 HRNは、紛争後の平和構築における正義と国民和解の達成といった観点からも被害者参加が重要であることから、今年9月13日付けで「Justice for Victims – Fundamental Issues for the Extraordinary Chambers in the Courts of Cambodia (被害者に正義を – カンボジア特別法廷についての基本的論点)」を作成、公表していました。 この被害者参加の問題について、HRNはカンボジア訪問時にECCC関係者に対してHRNの考え方を説明し、意見交換しましたが、その後、公表された内部規則案では、被害者が付帯私訴の民事当事者(civil party)として刑事手続の中で参加できる案となっています。また、補償措置に関しては、裁判所によって集合的・象徴的な補償命令も出せる規定があるなど注目されます。訪問時には、ECCC関係者から「現実的には、謝罪だけになるという可能性もある。しかし被害者にとっては、被害を語る場が与えられることそのものもが補償措置の一つとなり得ると理解している。」という声が聞かれました。被害者の数が多いので、参加の形態としては、個別審理ではなく集団審理が現実的ですが、内部規則ドラフトでは、被害者団体の役割が位置付けられていると共に、代理人リストをカンボジア弁護士会またはECCC事務局が作成し、被害者がそのリストから代理人を選ぶという案が提示されていて、集団的代理が想定されていると言えます。ドラフトでは、外国人もこの代理人リストに含む案となっています。 もっとも大きなポイントになりそうな点は、被害者担当部局(Victims Unit)が設置されるかどうか、です。訪問時、リー事務総長は、「被害者(証人)保護」については、重要性を認識しているものの、それを超えた被害者参加については、予算上の限界があると述べていましたが、公表されたドラフトでは、”For Discussion” という形で提案され、予算が得られるならば、という条件付きの提案となっています。この点、実際に予算措置が講じられ、設置までこぎつけることができるか、予断を許さない状況であり、私達としては、すでに意見書に述べたように、引き続き、設置を求めていきたいと考えています。
3.NGOの活躍 ECCCでの被害者参加問題については、FIDHと共に積極的な活動を行ってきたADHOCのほか、地道で有意義な活動を多くしているDC‐CAMも重要性を認識しています。Center for Social Development (CSD)や、KID (Khmer Institute of Democracy)も、被害者問題に積極的です。また、フランスのNGOグループであるCVIC-KRは意見書を作成して強力な提言を行ってきました。 これらのNGOに対して、国際NGOながらカンボジアに事務所をもつOSJIは、これまでECCC問題に積極的に関与してきましたし、カンボジア弁護士を中心とした有力NGOであるCDPもECCCについて提言などを行ってきましたが、被害者問題については、これまで主な活動の対象ではなかった、と言えます。しかし、内部規則案で、被害者の役割が明らかになってきた今、これからの活動が注目されます。コミュニティ・エデュケーションなどの活動をしてきたCCHRにも、被害者参加の観点からの一層の活動が期待されます。 私達は、今回、DC-Cam、ADHOC、OSJI、CDPなどを訪ねましたが、全体的な印象としては、HRN意見書は、事前におおむね読まれていたようですし、肯定的な評価を得ていたのではないか、という印象を受けました。