うつ認知行動療法への道

私は、認知行動療法を以下のようにとらえています。

 

認知は原因すなわちシステムの入力であり、行動は結果すなわちシステムの出力です。システムの出力を見て原因を推定することはいわゆる逆問題です。

 

簡単な例で、顔色を見てその人の心の状態を推定するといったこと、これが逆問題です。通常世の中に見られる逆問題とくらべて、心の逆問題は極めて複雑であるので、容易に解くことはできないのです。

 

このことで、歴史的には原因の推定よりもまず結果としての行動に着目した行動主義心理学が発展したと個人的には考えています。そして認知心理学のような心の情報処理過程のモデルができた段階で、認知という形での原因のモデル化がなされたのです。

 

システムを同定(心の状態を同定)することにおいて、入力と出力の両面に着目することが最善策です。すなわち、認知行動療法における、入力から出力、出力から入力という相互の突合せは極めて効果的な方法であると言えます。

 

以上が私の個人的な見解ですが、歴史的に著名な心理学者の研究が、どのように認知行動療法に統合されていったかを以下に示します。

 

認知行動療法への統合

アーロン・T・ベックは、伝統的な治療法の欠点を批判しながらも、その長所を巧みに取り入れて、一種の統合的精神療法を構築していったのです。認知行動療法は、うつの治療のために開発されましたが、今日では、さまざまな症状について広く適用されています。

 

例えば、クライアントを現象的に把握し、問題点を整理する場合には、伝統的な精神医学の記述論的観点を重視しています。クライアントとの信頼関係を築く上では、K・ロジャースの来談者中心療法の姿勢をとっています。また、認知のひずみを同定し修正していく段階では、フロイトの精神分析的な手法を取り入れています。認知の歪の同定は、フロイトの前意識を意識化することにある程度対応していると考えられます。

 

フロイト

フロイトは、チェコのフライベルグという小さな町で生まれました。ウイーン大学で医学を学び、1881年に学位を取得しました。学位取得後、引き続き生理学研究を続けようとしたのですが、経済的な理由から臨床医になりました。臨床医となった後、フランスの精神医学者シャルコー(Charcot.J.M)に留学し、帰国してからはブロイエル(Breuer.J)と共に催眠によるヒステリーの治療を研究しました。

 

ヒステリーというと、いわゆる当り散らす女性をイメージしますが、フロイトのヒステリーは、過去の抑圧された経験が、身体症状へと転換されたものを示しています。フロイトは、ヒステリーの原因を”性”の問題に焦点をあてました。

 

その後、1900年に”夢の研究”を発表し、これを契機に名声が高まりました。 フロイトの”精神分析”は少しづつ体系化されていき、”無意識”という大きな功績を残したのでした。

 

”無意識”の発見は、心理学会に大きな進展をもたらしました。  

 

私たちはつらい体験を無意識の世界に追い込んでしまいますが、この無意識の中に押し込んだ欲求は、心の中に葛藤を生じさせてしまいます。この無意識の中に隠された欲求が、様々な身体症状(ヒステリー)を引き起こすとフロイトは考えました。   フロイトは、心を”無意識”、”前意識”、”意識”という3つの体系に分ける”局所論”を提唱し、心の動きを説明しようとしました。そして、無意識の中にある隠れた欲求を意識化することの重要性を強調しました。

 

ロジャース  

ロジャースは当初の神学から、教育心理学と臨床心理学の学びに移りました。

 

ロジャースは独自の人間観に立ち、心理療法の目的を個人のパーソナリティの成長にあると捉え、人間には本来自然は成長能力があると信じ、非指示的な特徴を有する”来談者中心療法”を提唱しました。  

 

ロジャースは、心の問題の改善には、カウンセラーのカウンセリング態度が重要であるとして、”受容””共感的理解””自己一致”の3つの態度を重視しました。また、心理的な問題は、”理想の自己”と”現実の自己”の乖離によって生じると考えました。

 

人間の潜在能力を信頼するロジャースの立場は、”パーソン・センタード・アプローチ”と呼ばれ、現在のカウンセリングの1つの基礎となっています。

 

 

 

 

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