脳と心

心とは、いったい何なのでしょうか。

 

私たちは、びっくりしたり興奮したりすると心臓がドキドキしたり、つらいことがあると、胸が苦しくなってしまいます。このような反応から、心=胸・心臓ととらえがちなのですが、脳が心の働きを担っているのです。

 

心=脳は結びつきにくいかもしれませんが、胸や心臓が反応するのは、脳が指令を出しているからなのです。

 

脳がどのように心と結びついているのか。人間の脳は、まだ完全に解明されておらず、分かっていないことが多い機能です。

 

しかし、近年の脳研究の進歩によって、”喜び、悲しみ、怒り”といった心理学の領域で扱われてきた感情が、「大脳辺縁系」の働きと関係していることが明らかになってきました。大脳辺縁系の海馬では、記憶や学習における大切な役割を果たし、扁桃体では、情動学習の中核としての役割を果たしていることが明らかになっています。

 

また、「前頭前野」というところでは、行動の自発性や計画性に関連しており、前頭連合野が損傷すると、生活がだらしなくなったり、積極性や創造性が失われることが明らかになっています。

 

このように、私たちが”心”の働きとして捉えている感情や意欲は、”脳”と多くの関わりを持っているのです。

 

「人間の脳が全て解明されれば、心理学も必要なくなる」という方もいるようですが、残念ながら脳生理学的なことだけでは説明しきれない、心の働きがたくさんあります。

 

例えば、生理学的には生命・種の維持という、生物が生き抜くための合理的な基準で物事を捉えていきますが、このような見方では、命がけで他人を助けようとする自己犠牲的な行動について説明することができないのです。

 

脳の解明のためには、いろいろな計測手段が使用されます。脳生理学に関わる計測を行った結果に心に関する一意の解釈が対応するか、多分、1対無限に近いような対応関係があるものと私は考えています。これは、脳生理学に関わる計測結果から脳の状態を推定する問題、すなわち逆問題ですが、この世で最も複雑な逆問題として位置づけられるもので、はるかに人知を超えているような気もします。心が脳と結びつきずらいのは、この世で最も解くことが難しい逆問題であるがゆえんかもしれません。

 

脳機能のミクロな解明よりも、認知心理学のように、マクロな情報処理モデルとして心をモデル化するものの方が、当面の人類の心の問題に役立つと思われます。

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