08/06/17   活動報告一覧へ >>>      

G8洞爺湖サミット参加国に対する声明



今年7月、北海道洞爺湖においてG8サミットが開催される。今年は、すべての人の人権保障を宣言した「世界人権宣言」から60年にあたるが、世界中で重大な人権侵害が繰り返されている。今回のサミットにおいては、地球環境、貧困削減などの課題と並んで、人権侵害の根絶のためのG8諸国の明確なイニシアティブが求められる。人々の人権が蹂躙されるのを放置したままでは、発展、安全保障、環境保全はいずれも到底実現しない。
東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、今日、とりわけ憂慮されている以下の人権問題についてG8諸国がサミットを通じ、明確なコミットメントを表明することを求める。

1 ヒューマンライツ・ナウは、ビルマにおける軍事政権による人権侵害行為、スーダン・ダルフール地方におけるスーダン政府による人権侵害行為及びG8参加国によりテロ対策の名の下に行われている人権侵害行為に対して、深刻な懸念を表明し、G8参加国に対し、これらの極めて深刻な人権問題についてG8会合で真剣な問題提起をし、事態の打開のために行動をするよう、ここに強く要請する。

ビルマでは、昨年9月に僧侶らが中心となって発生した大規模な民主化運動を軍事政権が武力弾圧し、いまも1900人を超える僧侶、民主化活動家の身柄を拘束している。
本年5月2日から3日にかけてビルマを直撃したサイクロンにより死者少なくとも7万7000人、被災者240万人という大規模な被害が生じたが、軍事政権は、国外からの緊急援助が不可欠な状況であるにも関わらず、海外からの援助を拒み、被害を増大させた。
海外からの援助受け入れ表明後も、軍事政権は、被災者に対する食糧・医療・保健の供給を行うべき責任を怠り、被災者の多く、とりわけ子どもや女性、老人などが生命の危機にさらされている。また、軍事政権は避難民を避難所から強制退去させ、まだ安全性の確保されていない被災地に強制的に移動させ、被災者の生存・健康の危機を増大させている。
一方、軍事政権は、サイクロン被害の渦中に、アウンサンスーチー氏を総選挙プロセスから排除し、軍事政権の延命を主目的とする、人権・民主主義とは到底相いれない憲法国民投票を強行し、これが国民の多数の支持で成立したと宣言し、アウンサンスーチー氏の身体拘束を継続している。

スーダン・ダルフール地方では、2003年2月以来、政府および政府の支援を受けた軍事組織が、非アラブ系住民に対する攻撃を続けており、少なくとも約20万人が犠牲になったと言われており、女性に対する暴力も広範に発生し、数十万人単位での難民も発生するなど重大な人権侵害が発生している。スーダン北部と南部により2005年1月に結ばれた包括的和平合意(CPA)も、近時のアビェイ(Abyei)地方の戦闘の状況に鑑みれば、破棄同然の状態にある。
他方、21世紀に入って以降の人権侵害行為について、その多くの責任はG8参加国にも存在することをG8諸国は直視しなければならない。
特に2001年9月11日以降、「テロとの戦い」名目に、アフガニスタン、イラクでの戦闘、さらにチェチェンでも、罪のない一般市民が多数殺戮されている。テロ容疑者に対する拷問や、グアンタナモ基地等での無期限拘束など、G8参加国による国際人道法に違反する重大人権侵害行為は、枚挙に暇がない。こうした人権侵害行為について、なんらの責任追及も正義の実現もなされておらず、このようなG8参加国の態度は、世界に「対テロ戦争」名目による人権侵害を蔓延させている。

国際社会が人権侵害に寛容である限り、人権侵害は繰り返される。G8参加国が民主的国家の集団であると標榜するのであれば、以上のような深刻な人権状況についてG8が責任ある姿勢を示すべきであり、G8諸国の沈黙はそれ自体、世界の人権に逆行する虞がある。
私たちは、G8洞爺湖サミット開催にあたり、参加国が首脳会談において、以下の内容を盛り込んだ公式声明を出すよう求める。

1  ビルマにおける状況に関して
1)昨年9月の武力弾圧、今年5月の国民投票強行およびアウンサンスーチー氏の軟禁延長に公式に遺憾の意を表し、アウンサンスーチー氏を含む民主化勢力との無条件対話による民主化プロセスの実施を即時に行うよう求めること
2)サイクロン被災者がいまだに深刻な人道危機に直面していることに鑑み、サイクロンに対するG8諸国の支援を増大させ、ビルマ軍事政権に支援国との緊密な連携のもとに被災者に対する生命、食糧、医療、保健などの供給の責任を果たすよう求めること

2  スーダン・ダルフール地方における状況に関して
1)アビェイ地方での戦闘に遺憾を示し、スーダン政府とスーダン人民解放軍(Sudan People’s Liberation Army)に対して即時停戦と停戦合意の遵守を強力に求めること
2) 国連安保理決議1591に明記されているダルフール内の武装勢力に対する武器輸送の禁止に違反する行為が発生していることに遺憾を示し、世界各国に、直接・間接問わず国連憲章1591に違反する武器輸送を中止するよう求めること
3)G8参加国自身が和平合意の遵守および持続的平和の実現のためのコミットメントを 明らかにするとともに、ダルフール紛争における国際人道法違反行為の責任者に対する責任追及にむけたICCをはじめとする国際社会の取り組みをサポートすることを表明すること。ICCより逮捕状が発付されているスーダン元人道問題大臣アーメド・ハルーン(Ahmed Haroun)とジャンジャウィード民兵指導者アリ・クシャイブ(Ali Kosheib)を即時にICCに引き渡すよう、スーダン政府に対し強力に求めること

3  G8参加国による「テロ対策」名目の人権侵害行為に関して
1)いかなる名目であっても国際的に確立された人権基準および国際人道法を遵守することを確認するとともに、テロ対策の名のもとに発生した民間人への攻撃・無差別攻撃、拷問などのジュネーブ諸条約に違反する重大人権侵害行為についての真相究明、責任追及、正義の実現、公式な謝罪とを図っていくことを確認すること
2)人権侵害行為の再発防止のための具体的措置の確立に取り組むこと

2008年6月17日

ヒューマンライツ・ナウ
理事長  阿部 浩己
事務局長 伊藤 和子